ジリオンTWHDとブレーキセッティング
私はAmazonの画面を眺めながら悩んでいた。
少し前にカップラーメンにお湯を注いだつもりだったが、
フタを取ったカップの中にスープはない。
はて?焼きそば作ったんだったっけか??
思い返せば事の起こりはここだ。
この動画撮影を見ていたからに他ならない。
ロッドのビハインドを補うために8本編みのPEが使いたい。
が、今の私が使うにはスティーズはベンダに合わせるには少しピーキーだ。
もちろん投げられはするが、少々神経を使う。
コンクでも使えるのかもしれないがTWSのアドバンテージを知っているだけに、
可能であるならばダイワのリールが使いたいと思っていた。
彼は強い向かい風のなかK太やサスケ95Fをノーサミングでいとも簡単に投げた。
猜疑心の権化である私はどんなトリックを使っているのかと彼を詰問する。
が、むろんトリックなどなく、その理屈を丁寧に説明してくれた。
G1ジュラルミン製スプールとマグフォースの組み合わせは、
少し大きめのプラグや姿勢を崩しやすい固定重心のルアーを不安なく投げるにはもってこいだった。
知っていはいたが、実際に見て、体験すると知識は経験に変わる。
ふと目に違和感を感じ手で拭うと、その手にはウロコが付いてる。
なんと私の目からウロコが落ちたのだ。
ことわざではなく本当にあるのか!と驚いたが、よく考えてみると、
それは今夜のおかずにと先ほど港で拾ったボラの処理で跳ねたウロコが瞼に付着していたに過ぎなかった。
その日から私の心は揺れた。
ん? 今日注文すると到着が3日後から1週間以内?
それじゃ最後の大潮に間に合わないじゃないか!
ならばこうしてやる!
私は躊躇なくプライム会員となった。
あの選ばれしブルジョアしかなることが許されないプライム会員だ。
商品は明日〇/〇に到着致します。
ふん、金こそ力!
いい時代になったものだ・・・
それからそんなことはすっかり忘れ、勢いで入会してしまったhuluで
機動戦士ガンダム The ORIGINなぞを見ていたらすっかり夜が明けてしまった。
なんならもう昼だ。
どうせ今夜も雨、釣りはお休みだろう。
それなら最後まで見てやるさ。
などとつぶやきながら、念のため天気予報を見てみると今夜は雨が止むじゃないか。
イカン、早く寝なければと思いながらもダラダラと続きを見ていると、
ふとインターホンが来客を告げた。
モニタを見ると目つきの悪いずぶ濡れのメガネ男が立っている。
!?
もしかして先日呼んだデリヘル嬢がブスだったから居留守を使ったのがマズかったか。
と焦っていると、間の抜けた声で「郵便局です~。」
そうか、Amazonか。
さきほどまでビクついていたのが一転、小躍りしながら玄関に向かいドアを開けた。
さっそく投げに行きたいがこの雨だ、せっかくの初陣に雨でケチをつけたくない。
そうだ、今夜雨は上がる予報だ。
いきなりの本番投入は気が引けるが使いやすいことは実証済みだ、大丈夫だろう。
その夜は風も無く、ベイトリールのシェイクダウンには持ってこいの条件だった。
「ブレーキセッティングはマグが0でメカニカルはやや締め気味だったな」
そして期待の第1投。
シュッ!
シュイーン、ガン、ボチャ!
ん?
私としたことが、少し力んだか。
シュッ!
シュイーン、ガン、ボチャ!
んん?
シュッ!
シュイーン、ガン、ボチャ!
んんん?
奴め、謀ったな!!!
その夜はブレーキセッティングに明け暮れて終わった。
翌日、早々にあの男を川へと呼びだした。
事の顛末をつげ、私のタックルを彼に手渡しこの眼前で投げてもらうことにした。
これでトリックは使えまい、その嘘を白日の下にさらしてくれよう。
シュッ。
「自分のリールとかなりフィーリングが違いますね。」
な、なに~
世界一を誇る日本の工業製品だというのに同じ機種でそんなに個体差があるのか。。
冷静に考えれは当たり前だ。
メカニカルキャップでさえ同じだけ回してもゼロポジションにはならない。
そして私の現在のセッティングはマグ:2、メカニカルやや締め気味。
後半失速しがちな条件ならマグ:3又は4、セロポジション~ちょい締め。
あくまで現在、だ。
リールのコンディション、自身のスキルで今後も変わっていくだろう。
セッティングはマグ、メカニカルのいづれかは固定でもう一方で調整するのもアリ。
これがキマってしまいえばベンダとの相性はすこぶる良い。
今夜の釣行が楽しみだ。
ふと思い返すと、昨年来た時もあの男にスティーズの良さを説かれ、そして投げ、
1か月後、自分のロッドにはそのリールがセットされていた。
はて、あの男の職業はなんだったろうか?
老後に向けてこれから2000万円貯えなければならないというのに。。
これからきっと壺か印鑑を売りつけるに決まっている。
私はそっと彼のLINEをブロックした。